☆.。.:*・ 秘密の花園の鍵 .:*・°☆

お店に入ると店主が奥の方で何かを探していた
「何探してるの?」
僕の声に振り向く店主の顔はほこりをかぶり
似合わないマスクをつけていた。
マスクをはずす店主の唇は赤く、綺麗な形をしてる
「あれ?ココウ君今日は早いですね」
唇が動き僕の名前を呼ぶ
「うん、今日は学校の開校記念日だからお休みなんだ」
何か飲みますか?、と手を休めてのカウンターほうへいこうとする店主を
僕は引き止めた
「手伝うよ、なんだかおもしろうそうなんだもん」
僕の足元には沢山の、ちょっと古ぼけた不思議な物が散らばっていた。
「今朝早くお客様から電話がありましてね"黒猫印の眼鏡"をお探しているというのです。
以前は沢山あったんですけれどもねぇ

ダメですね…といいながら1つ1つ小さな箱を開けたりしている。
そして僕はその箱達を丁寧に整頓していく
その中に錆びた鍵が見えた
「芙蓉さん、それは?」
今では見た事のない、古い鍵だった
僕はその鍵の箱を見ると「秘密の花園の鍵」と書いてあった
取り出すとその下には小さなテレビ石

「あぁ、これは以前秘密の花園倶楽部の人から譲り受けたんですよ」
店主が 探す手をとめないまま、面白そうに話だす。
その鍵はかすかに何かの花の薫りがするようだった。

「ある豪邸の足の悪い植物学者が、いつも見た事もない植物を発見してくる
しかし、誰も学者が外出している姿をみたことがないし、
季節は夏だというのに日焼けもしていない
ただ、ある日ひょっこりと、美しい花の苗を持って発表したりして
いろいろな植物を発表していたんです。
しかしその植物は一週間もしないうちに枯れてしまうから
運がよければ実物を見れますが、実際には写真ばかり
学者仲間は半信半疑の目で見つつも
自分もその植物たちのを研究してみたいと思っていた
しかし、
それがどこに生息しているのか、どうやって発見したのか
一言も学者は発表してくれない、ただ、「秘密の花園」にあると…
後に嘘つき学者として学会から追放されてしまった彼は
大好きな植物の絵画に集めた広い屋敷で
寂しく晩年を過ごしたそうです。」

「ひとりぼっち?」
僕が聞く

店主は高い所から箱をだしながら
埃にむせたりしている。

「ただ1人も息子さんがいたのですが、喧嘩ばかりしていたそうです。
ですがお孫さんが1人いて、たびたび訪ねていたと聞いていますが…

そうですね、
たぶん彼はひとりぼっちではなかったと思いますよ
その証拠にお孫さんに暗号を残しているのです。
「鍵」と「石」を持って
死ぬまぎわに一言「青い薔薇が花園への入り口」と…
そう、言って亡くなったといいますよ。
そしてその亡骸は一晩のうちに消えてしまい、彼が寝ていたベットには
見た事もない花びらが散っていたそうです。

それからお孫さんが屋敷をくまなく探したんですが、
どこにもその鍵に合う扉も見つかりませんし、
青い薔薇も咲いて無い
しかし主人のいなくなった屋敷が売り払われる時間は刻々と迫っている。
ぐったりと居間で休んでいた彼はふっと正面の絵画に目がとまりました
どんどんと下取りの専門の会社が入って絵画を持って行きましたが
最後に残っていた絵画だったそうです。
満開の薔薇の油絵です。
しかし下の隅のほうになにかシミのようなものがある
近付いてみてみると
小さな青い薔薇です。

しかし鍵穴はありません、おそるおそる鍵とともにもらった石で
その薔薇を見てみると、なんと横に鍵穴が見えたそうです。
思いきってその鍵穴に鍵を差し込んだところ…」

僕は手のとまった店主の顔をジッと見る
店主も眉をひそめて僕を見る、そして
ふっと微笑んだ

「あわなかったそうです。」

がっかりした僕を店主は笑いながらカウンターへ誘った
そして奥で手を洗うと
綺麗な色の紅茶を出してくれた。
中には小さな花がくるくると舞っている

店主は自分の分も入れると、僕の髪についた
埃を払いながら話を進めてくれた。

「その後いくつかの鍵と石が見つかったのですが
どれも合わず、もしかしたら下取りの会社の方が持っていった中に
お孫さんの持っていた鍵に合う青い薔薇があったのかもしれません。
しかし、あっという間に散ってしまった膨大な家具や、絵画は
お孫さんの手には追えなかったのです。
しかし、鍵穴の見つけ方はわかりました。
あとは探すだけです。
そこで「秘密の花園倶楽部」の結成ですよ。、
お孫さんはこの話を新聞に載せて探す仲間をつのったそうですよ。
昔は年に何回か集まって鍵の交換や報告会なるものをしていたそうですが、
とうとう最後まで見つけた人はあらわれなかったそうです。

その後お孫さんも年をとって
この倶楽部もいつの間にかなくなってしまいました。

しかし探さなければならない絵画はとても多すぎたと
おっしゃってましたから
全ての鍵穴がまだまだ
見つかっていないのかもしれませんね。
それかもしかしたら
本当は見つけてるのに秘密にしていただけかも…」

錆びた鍵が僕の手の中で、その身を落とす

「ココウ君も探してみてはどうですか?」


帰り道僕はポケットの中に、今日の片づけのお礼として
あの秘密の花園の鍵をもらった。
これで僕も秘密の花園倶楽部の会員ということになるのかもしれない。
(結局黒猫印の眼鏡は見つかったけど、壊れて使い物にならなかった)

テレビ石を目にあててのぞく
白く濁って何も映さない
光さえ閉じ込められたまま

近くにあったポスターにあててみる
するとさっきとは違って
白く透き通ってカラフルな色を映し出す
まるで世界に溶け込んでいくようだった

リンリン!
背後で自転車のベルの音がする。
僕があわててよけると郵便屋の自転車だった。
気が付くと足下には小さな紙片が落ちていた

「お待たせしました!久方ぶりの報告会開催!!
月の半分かける土曜日 秘密の花園内 48番地区にて
ご自分の鍵と、石、そして帰り道を忘れずに」

僕の知らないだけで秘密の花園への扉は
ほんの近くにあるのかもしれない。
見方が違うだけで新しい世界が広がっていく
僕はテレビ石をそっとポケットにしまった






Item:09
name:秘密の花園の鍵
秘密の花園への鍵
秘密の花園倶楽部への会員証