☆.。.:*・ ブルーインク .:*・°☆

「ココウ君、袖に着いているシミはどうしたんですか?」
店主の芙蓉さんが、僕のシャツの袖口についているブルーの大きなシミを見て言った
「ああ、これは今日学校でインク壜を倒してしまったんだ」
恥ずかしい、慌てて洗ったら逆効果でどんどん広がってしまったんだ。
さっきまで巻いていたハンカチがどこかにいっている。
急いで隠す僕を見て、
「とても綺麗な色ですね、そのシェルボタンがまるで星のようで、夜明けの星空に見えますよ」
なんて言ってくれた。
店主はクラスの友達のようにからかって笑ったりしない。
「そういえば此の前、素敵なインク壜を見つけたんですよ」
店主がカウンターからお店の奥へ消え入ったかと思うと、
小さなシフォンに包まれた蒼い壜を持ってきた。
「星の柄だ」
「そうなんです、今はただの壜になってしまったんですが
昔は"夜空"という深いブルーインクが入っていて、
そのインクで文字を書くとそこから星がキラキラと散ったそうですよ」
「それってとても見にくくない?」
店主が懐かしそうにそのインク壜を見ながらクスリと笑う
「そうですね、
ですがそんなインクで書いた手紙はとても素敵な文章に
なりそうな気がしませんか?」
店主が僕を見た
「ココウ君だったら何を書きますか?」
渡されたインク壜をそっと開けると小さな星がチリリと光ったような気がした
「そうだな、僕だったら窓に星を描くよ」

その夜僕は星の海にただよう夢を見た





Item:02
name:ブルーインク壜
夜空というブルーインクが入っていたという壜
コルク栓にはラピスとめのうが閉じ込められている