☆.。.:*・ 結晶投影機 .:*・°☆

日の暮れるのも早くなってもう秋の予感がする。
夏のように湿った風じゃない、乾いた風が僕を追いこしてゆく
僕は暗くなった街を小走りに家路に急ぐ
クラスメイトのオルガが果物屋で青い葡萄を選んでいた
話しかけようかと思ったけど、隣に兄のユウがいたのでやめた。

僕はあの兄が好きでは無い、兄は優しいものだと思っている僕の
理想とは、かなりかけ離れている性格だから。

郵便局の前を通り過ぎたところで
送らなければならなかった手紙を思い出した。
この頃すぐに忘れてしまってだせなかった手紙だった
「よかった」
僕は白い鳥のマークのついているブルーのポストの前で
スクール鞄の中を探した

あれ?

昨日は一番前のポケットに入っていたはずの黄色い封筒が
今はなくなっていた。
最後に見たのはいつだっけ?
思い出してみると昨日雑貨店にいった時に、ノートを取り出した、
その時にはあるのを確認したはずなのに…
もしかしたら雑貨店に落としてきたのかもしれない。

僕は慌てて今来た道を戻る
途中でユウに呼ばれたような気がしたけど
気のせいだったのかもしれない。

坂をのぼって大きな十字路を右に曲がる
学校からだと近いのに…

僕は息をきらしながら雑貨店のドアを開けた。
中は真っ暗だった
「あれ?芙蓉さん?」
まだ閉っていなかったはずだけど…
「あぁ、ココウ君いらしゃい」
暗闇から声が聞こえる
「まわりに気をつけてこちらに来てください。素敵なんですよ」

いつの間にか肩に手が置かれ、僕を暗闇の中へ引き込んだ

目の前には光る結晶
「ね、綺麗でしょう?"結晶投影機"というものらしいです。」
夜にこの光を見つめていると、過去の記憶や、大切な思い出が
心の中に蘇るそうですよ…
僕はほのかに光るその結晶の光で照らし出される芙蓉さんの横顔を見た
瞳に投影機の光が反射して、キラキラと不思議な色をしている
「ココウ君は何を思い出しますか?」
僕は…
「わからないな…芙蓉さんは?」
「なにもかも…ですかねぇ」

どのくらいそうしていただろう…
このほのかな光が支配する世界を壊したのはシルバーの声だった

「何してんの?お前達」

声がしたとたん頭の上に重みを感じた
ムっとして頭の上のシルバーの手を振払って後ろを振り向いた時、
結晶投影機の光に照らされて、シルバーの目が光ったように
思ったのは気のせいだろうか

その目を見て僕は手紙の事を思い出した
お店の電気がついて、カウンターの横には探していた封筒があった
この前買った白い猫の切手が貼ってある
(シルバーのようなブルーと金の瞳の色
僕は迷わずそれを選んだんだ)

「あぁ、それココウ君のだったんだ、昨日帰る時に見つけてね」
持ち主がわからなかったのでおいておいたんですよ。
店主から手紙を奪ったシルバーがその切手を面白そうに見ていた

宛先を見ただろうか
僕はお礼を言うと雑貨店を後にした
ポストの前で僕は祈りながら手紙を投函する。

さっき結晶投影機で見た
思い出の中の兄の姿を思い浮かべながら

今度こそ届くようにと…






Item:10
name:結晶投影機
夜にこの光を見つめていると
過去の記憶や、大切な思い出が
心の中に蘇るという箱

[光点灯時]